私立高、5教科入試じわり 狙いは国公立の受験生? [変わる進学] – 朝日新聞デジタル

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 私立高校入試の試験科目は英語、数学、国語の3教科――。首都圏では長らくそういうイメージが強かった。そんななか、近年、理科、社会を含めた5教科入試を導入する学校が出てきている。その狙いとは。(川口敦子、宮坂麻子)

巣鴨中・高「間口広げた」

今月12日に行う高校入試で、3教科に加えて5教科も新たに選べるようにしたのは、私立の男子校、巣鴨中学校・高校(東京都豊島区)だ。

巣鴨は中学入試で、1時間で試験が終わる「算数選抜」という枠を設けている。今年は1日午後に行われ、定員20人に対し597人が受験する人気ぶりだった。午前に開成(荒川区)、武蔵(練馬区)などの中学を受験した生徒も受けたという。

中学入試では算数選抜を設ける一方で、高校入試では教科数を増やす。一見、矛盾した動きに見えるが、堀内不二夫校長は「算数が得意な子は、論理的に物事をとらえることができ、ほかの教科も総じて成績がいいことが多い」とした上で、「全ての子どもが中学受験ができるわけではないため、高校からの入学で間口を広げた。公立高入学に向けて勉強してきた受験生も選択肢の一つに考えてもらえたら」と狙いを語る。

首都圏には早稲田、慶応、明治、中央、青山学院などの大学付属・系列の私立高も多く、その多くが3教科を受験教科としている。一方で、筑波大付属駒場、東京学芸大付属などの国立や、首都圏の公立高校普通科の多くは5教科入試を採用。巣鴨は、これら国公立の上位校の受験者層を視野に入れている。

実際に国公立高の併願校として巣鴨を受験する生徒も多い。昨年実施の高校入試では、定員約70人に対して143人が受験し、88人が合格したが、入学者は約4割だった。今回の入試では合格者全体の約6割を「5教科受験者の総合点の成績上位者」から取り、残りの4割ほどは「全体の3教科の得点の上位者から取る」と明示。出願者数は5教科受験が167人で、3教科受験は62人(5日現在)だった。合わせて昨年の約1・6倍という。

堀内校長によると、高校入学段階で5教科の学力がそろっていると、大学受験でも選択肢が広がるという。「初年度の今回は3教科で準備してきた受験生に配慮したが、将来的には5教科に統一することも考えている」

男子校の本郷(豊島区)、女子校の豊島岡女子(同)などのように、近年、中高一貫校が高校からの募集を停止する動きが広がっている。その中で、高校から入学できる学校は受験生にとって貴重だ。受け入れる学校側にもメリットはあり、巣鴨の堀内校長は「高校からの入学者がいることで新しい風が入り、お互いにいい刺激になっている」と話す。

5教科か3教科、選べる高校も

都内では長く5教科入試を行っている私立高もあるが、首都圏では「私立高=3教科入試」のイメージも根強い。一方、千葉県内では近年、私立の上位校が5教科入試を導入している。

渋谷教育学園幕張高校(千葉市)は、2017年度入試から3教科の後期入試を廃止し、市川高校(千葉県市川市)も同年度から一般入試を5教科にしている。

専修大松戸高校(千葉県松戸市)も、今回の入試から、従来の3教科に理科・社会も加えた5教科か、3教科のどちらかを選択する方式に変えた。松垣優美教頭は「今年度から千葉県立高の入試は前期・後期が一本化される。少子化の折に受験生の選択肢を広げるには、このタイミングと考えた」と明かす。

3教科では私立特有の応用問題が出題されるため、公立高を第1志望としている受験生の中には、それにハードルを感じる人もいる。そこで、3教科も選べる選択制とした。

5教科に切り替わる際、受験生にとって気になるのは理科・社会の難易度や出題傾向だ。このため、専修大松戸ではサンプル問題を事前に作り、公表した。マークシート形式で、千葉県立の入試問題レベルに近いことを周知した形だ。

松垣教頭は「本校を第1志望として受ける受験生にとっては、3教科受験の需要があるため、今後、5教科に一本化する予定は今のところない。ただ近年、国公立大を志願する生徒が増えていることを考えると、高校入試の段階で5教科を選べると明示したことは、方向性としては間違っていないはずだ」と話す。

大学入試に備え「プラスに」

学習塾は、私立高の5教科入試をどうみるのか。

早稲田アカデミー教務本部長の竹中孝二さんは、巣鴨の試みについて、「事前の模試の動向などからみても、結果的には成功事例となるのではないか。開成や渋幕など、難関の5教科入試校の併願校として出願した生徒も少なくないようだ。5教科の基盤があることは強みで、入学すれば生徒全体への刺激も期待できるのでは」とみる。一方で、3教科の方が受けやすいという受験生も少なくないという。このため、私立高が国立大や医学部の合格実績を伸ばそうとする場合は、「5教科入試にするか、高校募集を停止して中高の6年間で育てるか、選択が分かれるのではないか」としている。

栄光ゼミナールの高校入試責任者を務める内田幸仁さんは「学校側の狙いはそれぞれ違う。ただ、高3生になったとき、国公立大の入試では、大学入学共通テスト5教科の受験が基本だ。多教科型の受験勉強が必要になることを考えると、早いうちから5教科をしっかり学ぶことは大きなプラスになる」と話す。

(変わる進学)

 

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