2021年3月に行われた福井県の県立高校一般入試で試験会場に入る受験生=福井市の羽水高校
福井県の県立高校一般入試の日程が新型コロナウイルスの影響で、2月上中旬に約1カ月繰り上がることが3月3日、明らかになった。例年2月上旬に行われる私立高校一般入試と日程が近くなり、学校関係者らは受験生の志望動向への影響を注視する。一方、保護者からは詰め込み式の学習を不安視する声が上がった。
私立の授業料無償化などを受けた近年の志望状況について、県教委関係者は「私立の合格が決まると、県立の受験をやめる生徒が増えている」と指摘する。21年度県立高一般入試の志願変更では、全日制は3日間で計259人が願書を取り下げ、再出願は130人だった。福井高専や私立高の合格が先に決まった生徒が、受験しない選択をしている。
県内の学習塾関係者は、約1カ月空いていた私立と県立の試験日が近くなることで「受験生は県立と私立の選択肢をワンセットで考えることになるだろう」と変化を見越す。受験勉強については「2月初めが勝負。県立までの猶予がなくなり、一気に大きなヤマを越えないといけなくなる」と生徒の負担増を懸念した。
一方、県私立中学高校協会の荻原昭人会長(啓新高校長)は、新型コロナの影響による前倒しを「事情はやむを得ない」と受け止める。その上で「おそらく私立の合格発表の前に県立の出願を決めることになり、どう変わるか。(受験生は)より同じ土俵で考えるようになるので、私立高は第1志望になることを目指して魅力を高めていく必要がある」と強調した。
「3月下旬になっても、進路が決まっていないのはかわいそう」と福井市内の中学校長は、日程前倒しに理解を示す。同市の中学2年女子の父親(40代)は「新型コロナによる休校で授業数が減った。受験が1カ月早まると、(3年間通しての)授業数がさらに減る」と危惧。「(受験に間に合わせるために)詰め込み式の学習に拍車がかかるのではないか。十分な学びを得られるのか」と不安を口にした。