「全国の公立高校で唯一、男女別定員を採用してきた都立高校がこの仕組みを廃止するらしいよ」「なぜこの仕組みが都立高だけ続いてきて、どうしてこのタイミングで変わるのかな」
都立高の入試改革について、バーチャルキャラクターの日比学くんと名瀬加奈さんが中丸亮夫編集委員に聞きました。
日比くん「なぜ、男女別定員を廃止するのですか」
男子と女子で合格ラインが違うのは不公平だという批判を受けたためです。都立の全日制普通科高校はコース制・単位制の学校を除く109校が男女別に入試をしています。都教育庁の資料によると、今年春の入試では1000点満点のところ、ある高校では女子の合格最低点が男子より89点も高くなりました。
男女合同定員で入試が行われた場合、合格できた女子は全体で691人、男子は95人でした。女子が多いのは、内申点が高い傾向があることなどが理由とみられます。
2018年に大学医学部の入試で女子を不利に扱う不正が発覚しました。この問題をきっかけに都立高の男女別定員にも批判が寄せられ、都が廃止を決断したわけです。
廃止は段階的に進めます。都は既に定員の1割を男女合同で選抜する「緩和措置」を42校で行っており、来春の入試で全校に広げます。第2段階では1割を2割に、第3段階で男女別定員をなくします。第2、第3段階に移る時期は中学・高校への影響を見ながら決めるとしています。
名瀬さん「なぜ、東京だけこの仕組みだったのですか」
東京は私学の規模が大きく、都立高と私立高が協調して中学3年生の進学先を確保してきたという事情があります。高校進学者が急増した1960年代、都立高の増設は追いつかず、都は私立に受け入れを頼りました。70年代に入ると都と私学側が話し合い、毎年の双方の入学枠を調整する仕組みができました。
20年度の学校基本調査によると、都の高校入学定員の6割が私立高です。私立は女子校が多く、かつては学校数が100を超えていました。
都立が男女別定員をやめると男子の不合格者が増え、進路が決まらない生徒が出る恐れがあります。女子の入学者減で私立の経営が悪化する可能性も否定できません。都の検討委員会が90年に「男女合同定員が望ましい」とする報告をまとめながら、緩和措置の導入にとどまったのはそうした事情があるからです。
日比くん「男女比が急に変わると、部活などへの影響が大きいのではないですか」
都立高の現場にはそのような声もあります。しかし都立でも単位制高校や専門高校は男女合同定員で、男女別から合同定員に移行した高校でも大きな問題は起きていないようです。仮に影響があるとしても、今の制度を維持する理由になるとは限りません。